書評

【書評】破滅のむこうにかかる虹(『わたしたちの怪獣』久永実木彦)

だれもが傷ついてできた心のひだに怪獣を住まわせている。 わたしたちの怪獣は、自分を守るためなら世界を壊したっていいと思っている。(「わたしたちの怪獣」より) この世界に自分の居場所は用意されていないのだと気がついたとき、「わたしたち」にはふ…

【書評】飲鴆止渇

揺碧山の鴆が飛んだ。その鳥、長い頸は鮮やかな常磐、空を切り裂く嘴と目は禍々しい蘇芳、紫黒の毒羽は翼長三里にも達し、人も動物も草木も、国さえも滅失させる。鴆は揺碧国の主都、春柳城に突如あらわれ、忽然と姿を消した。あれから十年だ。 荘厳な冒頭で…